2017年8月3日木曜日

スタインウェイB型のタッチウエイトマネジメント(続)

前回紹介したスタインウェイB型の仕事が終わりました。

まず偶数鍵のハンマーを外して下整音、センターのトルク調整、HSW測定をしました。
HSWをスマートチャートにプロットして傾向線を書き入れます。調整幅を考え鉛筆線のような感じに決めました。指標8.5、次高音からやや重めに持っていきます。最高音部はタッチウエイト上この程度では問題ないので、なるべく加工を最小限にするようにしました。


ベルトサンダーでの減量加工、ハンマー鉛での増量加工を経てアクションに戻します。
同様に奇数鍵のハンマーも加工します。次のスマートチャートで赤点のように仕上げました。


ウイペンはフレンジのトルク調整とスプリング溝の木殺しを行い、ヒールクロスに0.5mm厚の布ペーパーを挟み込みます。ストライクレシオを下げる方向ですのでジャック側に入れていきます。
ウイペン装着の際にスプレッド寸法を確かめます。低音から中音にかけて特に短めだったのでレールの上に薄板を挟み込み112.5mmに合わせます。

整調では特にバックチェックの合わせが全くできていませんでした。チェックされたハンマーを押すと軽く落ちて行ってしまうし、止まる位置も低すぎ(バックチェックが高すぎ)、バックチェックスキンがゆるゆるでした。正常に働くよう処置をします。

今回、サンプルを測った段階で鍵盤レシオが0.5~0.53とかなりのばらつきがあったので、ストライクレシオもかなりばらつきがあるのを見越してFW基準の鍵盤鉛調整を行いました。(作業前のFWは下表青色の線)

まず表計算ファイルを使い平衡等式からフロントウエイト値を求めます。

FW=KR・WW+HSW・SR-BW

ウイペンウエイトと鍵盤レシオはサンプルの平均値を用い、ハンマーストライクウエイトは実際値、ストライクレシオは平均値、目標バランスウエイトは今回は38gとして計算しました。
FW測定の要領でセットした鍵盤に鉛を載せて、計算で出したFW値になるよう鉛の位置決めをします。事前に手前の鉛は一つずつ抜いておきました。
加工は通常通り行います。最終FWは、HSWの傾向線と同様の滑らかさを持って調整されました。(下表赤色の線)


FW基準の鉛調整を行った場合は次にSR微調整を行います。各鍵盤のDWとUWを測定してBWを求め、BWのばらつきを取るようにSRを調整します。今回は38gを1.5g下回るもの、つまりBW36.5g以下になってしまっている鍵盤はレシオを低くし過ぎていると考えられるので、レシオを高く調整しなおします。ヒールに差したペーパーを奥(フレンジ側)に移動することでレシオを高くできるので、ペーパーの位置を加減して調整しました。ペーパーはジャック側に入れてあるのでこれ以上レシオを下げることはできません。残念ながらバランスパンチングクロスの半カットも使えないので、一部BW40gを超える鍵盤もありましたが、レシオの高すぎるものは許容範囲内としてこれ以上は追いかけませんでした。