2016年10月9日日曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2017のお知らせ

タッチウエイトマネジメント研修会2017年シリーズのご案内

来年(2017年)の日本での研修会日程が決まりました。研修内容の詳細については今後各会場の担当者と詰め、各会場ごとに詳細を発表していきます。
来年のシリーズでは新たに関西地区と中部地区での開催が決まりました。今まで参加できなかった方は是非お運びください。また、他の会場は今年に引き続いての開催です。内容も会場ごとに設定を合わせて、より深みのある研修会にしてまいります。


5月27日東京会場(全日、中級編の予定)
 日本調律師協会関東支部主催です。今年の研修会をベースにより実践的な研修でより理解を深めます。

5月29日・30日仙台会場(2日間中・上級編)
 阿部さんを中心とした有志による開催です。今年の研修会をベースに、より実践的に理解を深めます。

6月3日金沢会場(全日・中級編)
 日本調律師協会北陸支部主催です。今年の研修会の続編として具体的な実機アクションを題材に各種手法について解説していきます。

6月5日・6日関西会場(2日間・初級中級編)
 日本調律師協会関西支部主催です。この地域では初めての開催となります。初日は初級編で基礎的なところを勉強し、2日目はそれを元にどのようにタッチウエイトを変えていくのか実習します。

6月10日・11日中部会場(全日×2回、初級編、あるいは2日間で初級中級編)
 中部楽器技術専門学校主催です。この地域では初めての開催となります。初日は初級編で基礎的なところを勉強します。2日目は参加者を入れ替えて同様に初級編を行うか、あるいは初日から続いて中級編を実習します。

6月13日東京会場(全日・上級編)
 日本調律師協会関東支部9班主催です。昨年と今年の研修会をベースにより実践的な研修を進めていきます。特に慣性モーメントとギアレシオの理解と実際のアクションでの調整方法を体験していきます。

大月清水ピアノ調律事務所工房での開催は現在の所未定です。開催するとすれば上級編・プロ編になります。開催の場合でも今年同様募集せずに定員一杯になることが予想されます。興味がある方は早めに清水敬祐さん(piano.shimizu@gmail.com)に連絡をどうぞ。

なお、清水敬祐さんは関東支部研修委員でもあり拙著「タッチウエイトマネジメントの方法の出版元でもあります。初級導入編の研修会は清水さんも開催可能です。開催をお考えの方・団体はどうぞ上記e-mailアドレスお問い合わせください。




2016年10月1日土曜日

ワインバッハグランドアクションのタッチウエイトマネジメント

ワインバッハのアクションのタッチが重いから何とかしてくれ、と大ボスがアクションを工房に持ち返ってきました。



10年ほど前にうちでハンマー交換をしているピアノで、あまり使っていなかったのが最近良く使うようになってタッチの重さが気になるようになってきたという状況です。

弾いた感じが確かに重い。中音のシャンクフレンジがスティックしている。ハンマーの動きが鈍く、弱く引いたら動かないし強く弾くてもブレーキがかかった状態です。

どういうわけかハンマー交換の際鉛調整はされていませんでした。

基礎測定結果
6mmジグによるアクションレシオは6前半。
2gジグによるストライクレシオは6後半。中音のサンプルはシャンクフレンジがスティックしていたのでデータとしてはSR=7.3という数値が出ました。
フリクションは低・次高サンプルは許容範囲内。中音サンプルは32g、シャンクを持ち上げてみてもかなり低い位置でも落下しない位です。

スタンウッド測定結果
HSW=#9~#10
SR=6ちょい、C4は7ちょい(フレンジスティック)
FW=シーリングマイナス5g程度、次高音はシーリングプラスちょっと
BW=50g以上、次高音は40g中盤

考察と判断
3要素関連表と表計算ファイルでの検討ではHSWを減らし、1段階SRを減らしBW38gで良好になる判定が出ました。

ここで考察。この仕事はさほど精度を要求されておらず、かける時間はあまり多くは見積もっていない。スティックがあるので重いのは当然でそれだけ直してもある程度は軽減されるとは思ったのですが、さすがにBWも重いし簡便な方法を取ってできることをやることにしました。

判断は次の通り
ウイペンヒールへの厚紙挿入とバランスパンチングクロスの半カットをすることでSRを2段階減らしBWを38gに揃えるように鍵盤鉛調整する。HSWは整調も含めて作業に時間がかかりすぎるのでやらないことにしました。

サンプル作り
サンプル音のシャンクフレンジのトルク調整をまず実施。次にウイペンヒールに厚紙(クロスが緩かったので布ペーパー2枚重ね)を挿入。タッチ感は軽くなったものの測定ではSRがわずかしか下がらず。キャプスタンが下の写真のようにヒールクロスのジャック側にすでにずれており、効果が上がらなかったものと思われます。ただ接触部分はわずかとはいえ移動してギアレシオが軽減されているせいか弾いてみると結構軽くなっています。
次にそのまま半カットしたパンチングクロスと入れ替えて測定。SRが0.4から0.6低下。動的タッチ感はさほど変わったように感じませんでした。鉛を鍵盤上に仮に置いてBW=38gで位置とタッチ感を確認。非常に良好なタッチ感になっていました。
ちなみにその後ヒールから厚紙を抜くとタッチ感がぐっと重くなり、意外と元の状態とさほど変わりませんでした。そこで、やはりヒールとパンチングクロスの2段階を行うことに決めました。


実際の作業は会社の後輩に委任。指示を与えてやってもらいました。今までも同様の仕事はやってもらっているのでほとんど追加の指示もなく作業してくれました。もちろん本人はタッチウエイトマネジメントを理解しているわけではないのですが作業自体は知らなくてもできます。知りたいという希望はあるので、基礎部分から少しずつ解説してあげています。

先日この後輩がアクションをピアノに戻しに行ってセットアップ。お客様に大変満足していただいたと嬉しそうに報告がありました。