2018年のタッチウエイトマネジメント研修会は10月~11月に予定しています。研修会の要望が多い場合には、日程の都合上分散開催とし上記日程に入らない会場を2019年5月~6月に行います。
先日これまで研修会を行った会場と新たに開催の打診のあった会場に案内状をメール等にてお送りしました。(これまで研修会を行ったことのある地域とその主催者は過去ログをご参照ください)
今まで開催したことのある会場には実習編を提案しました。基本的に2日間のプログラムで1台を作業して仕上げます。基礎的な知識や計測方法はすでに知っているものとして作業全体の構成を学び、作業前後でのタッチの違いを体験します。
新規に開催する計画の会場には、基礎編・初級中級編を提案しています。タッチウエイトマネジメントの基礎知識を簡単な実習を通して学んでいただきます。
この研修会の開催に興味のある団体・個人で今回の案内を受け取っていない方は中村まで直接お問い合わせください。yuji3804@gmail.com
(追記)日本での研修会に先立ち2018年4月にオーストラリア・シドニー市にて3日間のタッチウエイトマネジメント実習研修会を開催します。(すでに定員一杯です)
Touch Weight Management seminar in Japan will be planned from October to November 2018. It will be additional dates from May to June 2019 if more than 6 seminars are asked. The finalized plan will be announced in March 2018.
TWM seminar will be held in Sydney, Australia, in April 2018. It will be a 3-days practical session. Maximum 9 participants are proposed, however it's already full. Please contact Mark Bolsius at Touchstone Pianos, Melbourne, Australia at mark@touchstonepianos.com.au for inquiry.
Yuji is available if you were interested in hosting TWM seminar in your area. Please email to yuji3804@gmail.com for inquiry.
これまであまり分析されてこなかったグランドピアノのタッチウエイトですが、スタンウッドの研究を機に最近は次々と新しい研究が発表されるようになってきました。私も独自の研究を踏まえてそこに参加しています。その成果を少しでも広めようとこのブログを継続し展開していくことにしました。 ピアノ技術者向けの内容ですが、一般の方にもわかるような内容を目指したいと思います。
2017年12月4日月曜日
2017年8月3日木曜日
スタインウェイB型のタッチウエイトマネジメント(続)
前回紹介したスタインウェイB型の仕事が終わりました。
まず偶数鍵のハンマーを外して下整音、センターのトルク調整、HSW測定をしました。
HSWをスマートチャートにプロットして傾向線を書き入れます。調整幅を考え鉛筆線のような感じに決めました。指標8.5、次高音からやや重めに持っていきます。最高音部はタッチウエイト上この程度では問題ないので、なるべく加工を最小限にするようにしました。
ベルトサンダーでの減量加工、ハンマー鉛での増量加工を経てアクションに戻します。
同様に奇数鍵のハンマーも加工します。次のスマートチャートで赤点のように仕上げました。
ウイペンはフレンジのトルク調整とスプリング溝の木殺しを行い、ヒールクロスに0.5mm厚の布ペーパーを挟み込みます。ストライクレシオを下げる方向ですのでジャック側に入れていきます。
ウイペン装着の際にスプレッド寸法を確かめます。低音から中音にかけて特に短めだったのでレールの上に薄板を挟み込み112.5mmに合わせます。
整調では特にバックチェックの合わせが全くできていませんでした。チェックされたハンマーを押すと軽く落ちて行ってしまうし、止まる位置も低すぎ(バックチェックが高すぎ)、バックチェックスキンがゆるゆるでした。正常に働くよう処置をします。
今回、サンプルを測った段階で鍵盤レシオが0.5~0.53とかなりのばらつきがあったので、ストライクレシオもかなりばらつきがあるのを見越してFW基準の鍵盤鉛調整を行いました。(作業前のFWは下表青色の線)
まず表計算ファイルを使い平衡等式からフロントウエイト値を求めます。
FW=KR・WW+HSW・SR-BW
ウイペンウエイトと鍵盤レシオはサンプルの平均値を用い、ハンマーストライクウエイトは実際値、ストライクレシオは平均値、目標バランスウエイトは今回は38gとして計算しました。
FW測定の要領でセットした鍵盤に鉛を載せて、計算で出したFW値になるよう鉛の位置決めをします。事前に手前の鉛は一つずつ抜いておきました。
加工は通常通り行います。最終FWは、HSWの傾向線と同様の滑らかさを持って調整されました。(下表赤色の線)
まず偶数鍵のハンマーを外して下整音、センターのトルク調整、HSW測定をしました。
HSWをスマートチャートにプロットして傾向線を書き入れます。調整幅を考え鉛筆線のような感じに決めました。指標8.5、次高音からやや重めに持っていきます。最高音部はタッチウエイト上この程度では問題ないので、なるべく加工を最小限にするようにしました。
ベルトサンダーでの減量加工、ハンマー鉛での増量加工を経てアクションに戻します。
同様に奇数鍵のハンマーも加工します。次のスマートチャートで赤点のように仕上げました。
ウイペンはフレンジのトルク調整とスプリング溝の木殺しを行い、ヒールクロスに0.5mm厚の布ペーパーを挟み込みます。ストライクレシオを下げる方向ですのでジャック側に入れていきます。
ウイペン装着の際にスプレッド寸法を確かめます。低音から中音にかけて特に短めだったのでレールの上に薄板を挟み込み112.5mmに合わせます。
整調では特にバックチェックの合わせが全くできていませんでした。チェックされたハンマーを押すと軽く落ちて行ってしまうし、止まる位置も低すぎ(バックチェックが高すぎ)、バックチェックスキンがゆるゆるでした。正常に働くよう処置をします。
今回、サンプルを測った段階で鍵盤レシオが0.5~0.53とかなりのばらつきがあったので、ストライクレシオもかなりばらつきがあるのを見越してFW基準の鍵盤鉛調整を行いました。(作業前のFWは下表青色の線)
まず表計算ファイルを使い平衡等式からフロントウエイト値を求めます。
FW=KR・WW+HSW・SR-BW
ウイペンウエイトと鍵盤レシオはサンプルの平均値を用い、ハンマーストライクウエイトは実際値、ストライクレシオは平均値、目標バランスウエイトは今回は38gとして計算しました。
FW測定の要領でセットした鍵盤に鉛を載せて、計算で出したFW値になるよう鉛の位置決めをします。事前に手前の鉛は一つずつ抜いておきました。
加工は通常通り行います。最終FWは、HSWの傾向線と同様の滑らかさを持って調整されました。(下表赤色の線)
FW基準の鉛調整を行った場合は次にSR微調整を行います。各鍵盤のDWとUWを測定してBWを求め、BWのばらつきを取るようにSRを調整します。今回は38gを1.5g下回るもの、つまりBW36.5g以下になってしまっている鍵盤はレシオを低くし過ぎていると考えられるので、レシオを高く調整しなおします。ヒールに差したペーパーを奥(フレンジ側)に移動することでレシオを高くできるので、ペーパーの位置を加減して調整しました。ペーパーはジャック側に入れてあるのでこれ以上レシオを下げることはできません。残念ながらバランスパンチングクロスの半カットも使えないので、一部BW40gを超える鍵盤もありましたが、レシオの高すぎるものは許容範囲内としてこれ以上は追いかけませんでした。
2017年7月23日日曜日
スタインウェイB型のタッチウエイトマネジメント
あるピアノの先生が古いカワイの代わりに中古で購入したスタインウェイのB型。それほど前ではない時期にハンマーとウイペンが交換されています。このピアノが特殊なのは、ニューヨーク製の本体にハンブルグ製のウイペンとハンマーが装着されている点です。意図的に行われたというよりは手に入りやすいものを使ったと考えられます。
昨年購入したそうですがタッチが重く弾きづらいとのことで事前チェックに伺いました。詳しく話を聞くと、全般的に重いという前提の上で、特に低音域でピアニッシモでの速いパッセージを弾く時に音が出づらく抜けてしまうことがあるとのことでした。またタッチのばらつきもあり、とても弾きづらいそうです。
アクション全景
チェックで見えてきた状況は次の通り。
1、ダンパーのかかりが5mmから10mmで早すぎで、ダンパーペダルを使わない演奏では初動で指に重さが掛かり弾きづらいと思われる。また、W型ダンパーフェルトが弦に深く食い込んでおり、弦から離れる時の抵抗が意外とピアニッシモでは引っかかるのではないか。
2、スプレッド寸法が低音111mm、高音112mmとかなり短め。ウイペンレールには何も挟まれていないので、ウイペン・ハンマー交換時にこの寸法は調整されていないようだ。この寸法が短いとウイペン入力寸法・出力寸法両方に影響があるが、入力寸法の方により大きな影響をもたらすので、ギアレシオが高くなっていると思われる。
3、シャンクフレンジとウイペンフレンジがスティック気味のため当然重く、動きづらく感じる。
4、ストライクレシオは5.6から6.2とばらつきが大きい。これはサンプル鍵での鍵盤レシオが5.0から5.3とかなりばらついていることが原因の一つで、横からキャプスタンのラインを見通すと前後に明らかにわかるばらつきがある。
5、ハンマーストライクウエイトは指標8から9で意外と重くはなく揃いも悪くは無い。
6、フロントウエイトはシーリング値辺りから+6gで、やや重すぎ傾向である。
7、鍵盤鉛は「アクセラレーテットアクション」での説明とは異なり一般的な手前に寄せた配列になっている。低音大4~5個、中音大2~4個、次高音大1~2個、とやや多めに見える。DWの数字と足された鉛の様子から、以前のハンマー交換の際に伝統的なDW基準の鉛調整が行われたことが想像される。
ウイペンとシャンクを両方ハンブルク製に交換してあるので、その部分での問題はありませんでした。キャプスタンも直立で植えられており、通常のアクションの動きをしています。
手前寄りから間隔良く入れられた鍵盤鉛:本来アクセラレーテットアクションでは慣性モーメント軽減のため鉛はバランスピン寄りに配列されると解説されている。このピアノでは工場出荷状態でこのような鉛入れをされている。
アクセラレーテットアクションのもう一つの特徴であるかまぼこ型バランスクロスブロックは健在
データを検討した結果次の作業を提案しました。
1、W型ダンパーフェルトのトリミングと掛かり調整
2、アクションの全フレンジのトルクチェックと再調整
3、アクションスプレッド寸法の基準値への調整
4、ハンマーストライクウエイト調整
5、ウイペンヒールへの薄板挿入によるストライクレシオの削減とばらつき修正
6、鍵盤手前中央付近に重心を置いた鍵盤鉛配置
7、コンサート演奏レベルでのペダル調整、整調と整音・調律
この仕事での重要なポイントは2つあり、ひとつはスプレッド寸法を適切に設定しなおすところ。ギアレシオのタッチウエイトへの影響を把握していないと見過ごしてしまうところです。
もう一つは、キャプスタンスクリューの位置のばらつきをヒールへの薄板挿入の位置調整によって相殺させるところです。これはFW基準の鍵盤鉛調整を行った上で、BWを見ながらヒールの薄板位置を調整することで可能になります。
なお、かまぼこ型バランスクロスブロックですとクロスを半カットすることによるレシオ調整は効き目がかなり少ないので、今回ここには手を付けません。
現在アクションを引き取って作業を開始しています。何か面白い発見があれば続報を投稿する予定です。
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