2016年4月24日日曜日

タッチウエイトの開拓者、デービット・スタンウッド氏を迎えて

4月15日から17日まで私の働くジェンキンピアノサービス工房にてニュージーランドピアノ調律師協会の年次総会とミニコンベンションが開かれました。

今回は元々私がデービット・スタンウッド氏の研修会を提案したのもあって、プログラム作りや仕込みなど、私が中心となって運営しました。

総会の様子

初日午前中は協会の総会。役員改選もありました。私は今年も副会長を引き受けました。

午後はオーストラリアからも参加者が集まり、ミニコンベンションの開幕です。
さっそくスタンウッド氏の講義第1弾、「フェルトの科学とピアノでの扱い方」です。羊毛の顕微鏡写真なども使ってその構造と特色を説明して、ピアノに使われるときの利点やその注意事項などを話していただきました。深層シュガーコーティング整音法の実演もあり、参加者は興味津々に見て弾いて聞いていました。

デービット・スタンウッド氏と私、メールでやり取りはしていたのですが、実際に会うのは初めて。


初日の講義の様子

2日目は1時間半を3コマ使ってタッチウエイトに関する集中講義でした。

1コマ目は「新タッチウエイト度量衡法の開発史」でした。弾きやすさを求めてアクションの改良を追い求めてきた歴史を語っていただきました。タッチウエイトを中心にどのようにしたら滑らかで弾きやすいタッチを得ることができるのか氏ならではの視点で解説してもらいました。

2コマ目では「アクションのテコ比率から何が創造されたか」。いよいよ精密タッチデザインの解説です。テコ比率がどのように計測され、どのような効果を生むのか。そしてどのように調整できるのかを実験を通じての説明でした。テコ比率の微調整ができるピアノ後付けシステムのSALAも写真をふんだんに使ってその構造と働きを解説していただきました。初めて目にする参加者も多く、「おーーっ」という声がそこここで上がっていました。

3コマ目は「ハンマーの重さが音とタッチに与える影響」というテーマでした。用意したグランドピアノにクリップを装着して実際にストライクウエイトを重くして、タッチと音がどのように変化するのか確認しました。氏のこれまでの研究資料からいくつものストライクウエイトの実例やストライクレシオとのかかわりなどハンマーがどのようにピアノの音とタッチに影響を与えているかを解き明かしてくれました。

講義の合間や休憩時間などにも質問に集まる参加者が絶えず、その内容の素晴らしさを裏付けていました。

3日目は氏の講義はなく、ニュージーランド協会の会員による発表を行いました。私は氏からミーティングの提案を受け1時間ほど会を抜けて氏の宿舎にお邪魔しました。タッチウエイトをめぐるいろいろな商品や他の技術者の研究について意見交換をしたり、慣性モーメントの計量方法で氏独自のやり方に意見を求められたり、次の段階となるであろう理論部分を方程式の形で表現することを勧められたりしました。
今後の新たなチャレンジを提示されてうれしく思います。


参加者全員による記念写真(オークランド、ジェンキンサービス工房にて)

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