2016年10月1日土曜日

ワインバッハグランドアクションのタッチウエイトマネジメント

ワインバッハのアクションのタッチが重いから何とかしてくれ、と大ボスがアクションを工房に持ち返ってきました。



10年ほど前にうちでハンマー交換をしているピアノで、あまり使っていなかったのが最近良く使うようになってタッチの重さが気になるようになってきたという状況です。

弾いた感じが確かに重い。中音のシャンクフレンジがスティックしている。ハンマーの動きが鈍く、弱く引いたら動かないし強く弾くてもブレーキがかかった状態です。

どういうわけかハンマー交換の際鉛調整はされていませんでした。

基礎測定結果
6mmジグによるアクションレシオは6前半。
2gジグによるストライクレシオは6後半。中音のサンプルはシャンクフレンジがスティックしていたのでデータとしてはSR=7.3という数値が出ました。
フリクションは低・次高サンプルは許容範囲内。中音サンプルは32g、シャンクを持ち上げてみてもかなり低い位置でも落下しない位です。

スタンウッド測定結果
HSW=#9~#10
SR=6ちょい、C4は7ちょい(フレンジスティック)
FW=シーリングマイナス5g程度、次高音はシーリングプラスちょっと
BW=50g以上、次高音は40g中盤

考察と判断
3要素関連表と表計算ファイルでの検討ではHSWを減らし、1段階SRを減らしBW38gで良好になる判定が出ました。

ここで考察。この仕事はさほど精度を要求されておらず、かける時間はあまり多くは見積もっていない。スティックがあるので重いのは当然でそれだけ直してもある程度は軽減されるとは思ったのですが、さすがにBWも重いし簡便な方法を取ってできることをやることにしました。

判断は次の通り
ウイペンヒールへの厚紙挿入とバランスパンチングクロスの半カットをすることでSRを2段階減らしBWを38gに揃えるように鍵盤鉛調整する。HSWは整調も含めて作業に時間がかかりすぎるのでやらないことにしました。

サンプル作り
サンプル音のシャンクフレンジのトルク調整をまず実施。次にウイペンヒールに厚紙(クロスが緩かったので布ペーパー2枚重ね)を挿入。タッチ感は軽くなったものの測定ではSRがわずかしか下がらず。キャプスタンが下の写真のようにヒールクロスのジャック側にすでにずれており、効果が上がらなかったものと思われます。ただ接触部分はわずかとはいえ移動してギアレシオが軽減されているせいか弾いてみると結構軽くなっています。
次にそのまま半カットしたパンチングクロスと入れ替えて測定。SRが0.4から0.6低下。動的タッチ感はさほど変わったように感じませんでした。鉛を鍵盤上に仮に置いてBW=38gで位置とタッチ感を確認。非常に良好なタッチ感になっていました。
ちなみにその後ヒールから厚紙を抜くとタッチ感がぐっと重くなり、意外と元の状態とさほど変わりませんでした。そこで、やはりヒールとパンチングクロスの2段階を行うことに決めました。


実際の作業は会社の後輩に委任。指示を与えてやってもらいました。今までも同様の仕事はやってもらっているのでほとんど追加の指示もなく作業してくれました。もちろん本人はタッチウエイトマネジメントを理解しているわけではないのですが作業自体は知らなくてもできます。知りたいという希望はあるので、基礎部分から少しずつ解説してあげています。

先日この後輩がアクションをピアノに戻しに行ってセットアップ。お客様に大変満足していただいたと嬉しそうに報告がありました。

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