2018年1月25日木曜日

ベーゼンドルファーのタッチウエイトマネジメント



今年一台目の仕事はタッチウエイトマネジメントでした。大ボスが持ち込んできたこのピアノ、ポーランドで大修理されたものだそうです。ポーランド修理のピアノは他にも見たことがありますが、ほとんどが「外装はきれいだが内装は?」の品質が定番ですが、このピアノも果たしてその通りでした。ハンマーやシャンクは新品、各部のフェルト・クロス類も交換されています。

顧客はアマチュアのピアニスト、買ったは良いがタッチが重すぎて弾けないからなんとかしてほしいとの要望。

初期観察の結果、
①ハンマーのテーパーやテール加工がされていない、
②ローラーがジャックが触れないところも含めてべったりと黒くなっている(下写真参照)
③鍵盤鉛はそこそこ悪くなさそう。やった形跡はあり、
④鍵盤ブッシングがガタなし。バランスホールはスカスカ。
⑤シャンクフレンジとウイペンフレンジは固めなのでトルク調整要
⑤2gおもりによるSRは5.8、と意外に悪くない。


サンプル鍵盤でのスタンウッド測定の結果は、
BW:37g~40g で標準
HSW:#8~#9
FW:低中は比較的軽め、次高はシーリング値付近
KR:0.44~0.47と普通より小さめでばらつき大きい
SR:5.4~5.6と普通より小さめ
F:12g~17g

これらの数値から見るとスタンウッドの標準値から見ると意外なほど悪くないわけですが、実際の弾いた感じはかなり重いのです。フリクションの影響がかなり大きいのではないかと思われました(特に鍵盤ブッシング)。

偶数鍵のスマートチャートは次の通り。サンプルで試した40Cはテーパー削り済で赤印。他はオリジナルの値。緑線が目標HSWライン。高音部は現状で重すぎないため、無理して削らないカーブにしました。低音の上の方と中音部が特に重めなのがわかります。

方向性としてはHSWを中低音を中心になるべく軽く揃えて、フレンジ・鍵盤ブッシング・ローラーなどのフリクション部分をしっかり調整し、鍵盤鉛はFW基準で事前に調整、そして整調まで仕上げた段階でSR調整をするかどうか決めることにしました。

まずはフレンジのトルク調整、事前針刺しもします。

HSW調整では削る前の重さを量り、削った後に必要量減ったかどうか比較します。HSW測定のやり方をする必要はありません。

奇数鍵も含めて仕上がった段階のスマートチャート。赤点が仕上がり。最大1.1gの減量をしました。ハンマー鉛入れの必要はありませんでした。

FWのグラフ。赤線がシーリング、ぎざぎざの青線がオリジナル、滑らかな緑線が目標FW値(仕上げは±1gで調整しました)。

整調をある程度やったところで試弾。大ボスと打ち合わせの上、中音から低音の白鍵をもう少し軽くしたい、ということでパンチングクロスをカットしました。KRが中音白0.45黒0.44、低音は白0.46黒0.44だったので、低音白は半カット、中音白は三分の一カットにしました。


中音白鍵はクロスの穴を残す形でカットしたので、そのまま貼らずに入れてあります。低音は半カットして既存のパンチングペーパーに貼ることにしました。

整調を軽く見直しておしまいです。

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