2015年10月2日金曜日

スタインウェイのコンサートピアノのタッチウエイトマネジメント(前半)




先月の末からスタインウェイのコンサートグランドピアノ、モデルDのタッチウエイトマネジメントを行っています。5年ほど前に大修理を施されているピアノですが、今度新しいオーナーに転売され遠くに行くことになりました。販売店の要望で最良のコンディションにセッティングします。修理時の仕事自体は同僚がやったのですが、その当時はまだタッチウエイトに関してまだ手探り状態だったので、私からは助言をせず通常の鍵盤鉛調整だけしていました。しかし改めて出会うことができたので、これを機に良好なピアノをどこまで引き上げることができるのか挑戦することにしました。特にタッチウエイトの再調整と整音・弦のセッティングなど試す良い機会だと考えています。

サンプルの測定から、スタンウッドの平衡等式と3要素関連表からバランスクロスのカットとウイペンヒールでの接点移動が必要と判断しました。実際にサンプル音にそれらの加工を施してからストライクレシオを測定したら良好な結果で、アクションレシオも下がりすぎることなく、通常の整調の範囲内で収まることも確認しました。そこでまず、奇数鍵のハンマーを外しハンマーストライクウエイトを測定しました。

傾向線では指標9から指標11の間でばらついています。このグラフからいくと指標10から11の間では調整可能ですが、今回は指標10付近に合わせることにしました(実作業では鉛筆で概略線を入れて調整時の目安としています)。現状でもそのレベルの重さの音は多くあり、十分な音量と音色が得られることが想定されます。そして全体にハンマーを軽めにできるので、バランスウエイトは重め(42gくらいかな、と考え中です)に取った上で慣性モーメントをなるべく小さめに設定すれば演奏会用の楽器として適当であろうと判断しました。

こんな感じで測定しながらスマートチャートとデータ表に記入していきました。(後ろに写っているアクションには残り半分のハンマーがついています。)


ハンマーストライクウエイトを測定した後、下針を刺して、ハンマーで打弦点あたりを叩いて、HSW調整に入りました。減らすものはテーパ部で大方減量し、それでも足りないものはテール部加工と穴あけでなんとか赤色のところまでたどり着きました。軽すぎる7~8鍵はハンマー鉛を入れて調整して赤色に合わせています。今日は残り半分のハンマーの測定をしましたが、ほとんど同じ傾向で同じようにばらついていました。それらは来週に加工していきます。





0 件のコメント:

コメントを投稿