2014年6月18日水曜日

鍵盤の慣性モーメントを求める

(3)鍵盤

鍵盤の説明として図版4の模式図を使います。
(図版4) 鍵盤を単純化した模式図を使って慣性モーメントの求め方を考える。
鍵盤の慣性モーメントもハンマーやウイペンと同じように求めます。鍵盤板を4cm間隔で分けて考え、鍵盤鉛やキャプスタンスクリューなどは個別に求めて最後に合計します。そうしますと、図版4で示したサンプルの鍵盤の慣性モーメントは、次のように求められます。
MoI (key) = m1(s1)2 + m2(s2) 2 + m3(s3) 2 + mL(sL)2 + m4(s4)2 + m5(s5)2 + m6(s6)2 + mc(sc)2
実際の測定では図版5のように紙に鍵盤の形状や鉛の位置などを写し取りそこから距離などを測って求めていきます。
(図版5) 鍵盤の慣性モーメントを求めるために、紙に鍵盤の詳細を写し取る。
鍵盤を紙の上に載せて外形を写し取ります。バランスホールの中心位置(鍵盤の回転中心点)、鉛の位置と直径・長さ、キャプスタンスクリューの位置、バックチェックの位置、座板中や座板後の位置や寸法、白鍵・黒鍵の重心位置などを書き入れます。
外せる部品、たとえばキャプスタンスクリューは取り外して質量を測定します。取り外せない部品、たとえば、白鍵・黒鍵材料やバックチェックなどは手持ちの代替品を測定して使用することでも十分です。鍵盤鉛は大きさがメーカーや時代によりまちまちなので、計算で体積を求めた上で密度をかけて質量を求めます(半径の二乗x円周率x長さx密度)。密度は調べても分かりますが、手持ちの鉛を使って算出することも可能です。
木部は切断はもちろんせずに、スプルース部は4cmごとのブロックを想定して、それぞれの体積を幅x厚さx4で求め、密度をかけて質量を求めます。楓やぶな材を使用している座板などは同じように質量を出した後スプルースの分割パターンに合わせて分散してそれぞれの区画に加算してあげます。
すべての部分を計測したら私の開発した慣性モーメント計算表にデータを入力します。データを入れますと、慣性モーメント値が自動計算されます(図版6)。

(図版6) 中村式慣性モーメント計算表
実際の鍵盤でどのような値になるのか、私がこれまで計算した値の例を上げてみましょう。
·       スタインウェイD、最低音:       72,000 gcm
·       スタインウェイD、真ん中のC音:     50,400 gcm
·       ヤマハC3の真ん中のC音:      31,000 gcm
·       カワイK3(アップライト)の真ん中のC音:             6,000 gcm
メーカーや機種、グランドかアップライトかによってその値にかなりの違いがあるのがわかります。

上記慣性モーメント計算表(マイクロソフト・エクセルファイル)は希望の方に無料で配布しています。ご希望の方はyuji3804@gmail.comまでその旨を書いた上でお申し込みください。返信が遅れる場合もありますのであらかじめご了承ください。

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