2013年12月4日水曜日

タッチを変える Page 25: ハンマーの質量調整によるタッチへの効果

前回のスライドで見たように、ハンマーの質量調整はタッチへの影響に効果的な反面、調整幅が小さいのが難点でした。

ピアノによってハンマーの質量の影響は変わりますが、ここでは、前のほうで例に使ったスタインウェイのコンサートピアノで見ていきます。ハンマーの重さの変化がタッチにどのくらい変化をもたらすかです。

表の一番上は0.2g調整した場合です。これは減らしても増やしても同じです。プラスになるかマイナスになるかの違いです。バランスウエイトはこのピアノのストライクレシオが5.5のため1.1g変化します。鍵盤手前で感じるハンマー由来の等価慣性モーメントは3700gcm2 の変化です。バランスウエイト1gの違いはあまり感じないかもしれません。アクションの動きは少しは違いを感じる程度でしょうか。

ハンマーを1g軽くした場合はこの5倍変化することになりますので、バランスウエイトは5.5g、等価慣性モーメントは18600gcmの変化になります。このアクションの合計慣性モーメントから見るとこれだけで8%近く減ることになります。このくらいやると相当タッチに影響が出そうです。もちろん音色音量も結構変わってしまいそうですね。

削る量は前回のスライドで見たようなやり方で微調整できますので、デジタルはかりを使いながら削り込んでいけば、あるいは入れる鉛を調整すれば0.1g単位で調整することが可能です。そういう意味では、ハンマーが1gの幅で調整できるのであれば通常の仕事としては十分な調整範囲を持っているといって良いかもしれません。

次にハンマーの質量の変化と同じ効果をウイペンや鍵盤ではどのくらいで得られるのか比較してみましょう。

ウイペン全体の鍵盤手前での等価慣性モーメントは4300gcmしかありません。これはハンマー0.2gちょっとの分と同じです。これはウイペン全体を取り去っても、ハンマー0.2gと同じ効果だということを意味します。かなり強引な例ですが、このことから、ちょこちょこっとしたウイペンの肉抜きや軽量化などはほとんどタッチには影響しないのがお分かりいただけると思います。

例外は、アシストスプリング(調整ねじつきでも、なしでも)付きのウイペンに交換する場合です。この部品はバランスウエイトを効果的に減らすことができます。それによって鉛も減らせるので慣性モーメントも減らせます。あまり強すぎるとスプリングの感触が弾き手の指に伝わってしまうという欠点もあります。(詳しくはこのブログの古い記事、第2章2項他をご参照ください http://yujipiano.blogspot.co.nz/2012/11/blog-post_598.html

鍵盤は別なスライドで説明しますが、多いものでは慣性モーメントを8000gcm程度まで調整できる幅があります。ハンマーでいうと0.5g程度に匹敵するので、なかなか馬鹿にはできない数字です。アクションを外して鍵盤だけ指で上下させても慣性モーメントの違いは体感できますが、特に長い鍵盤の楽器ではやはりその値の少ない方が軽く敏感に動きます。

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