これまであまり分析されてこなかったグランドピアノのタッチウエイトですが、スタンウッドの研究を機に最近は次々と新しい研究が発表されるようになってきました。私も独自の研究を踏まえてそこに参加しています。その成果を少しでも広めようとこのブログを継続し展開していくことにしました。 ピアノ技術者向けの内容ですが、一般の方にもわかるような内容を目指したいと思います。
2013年11月26日火曜日
タッチを変える Page 17: 鍵盤の慣性モーメント計算用のテンプレート
このスライドでは、具体的にどのように鍵盤のテンプレートを作り、そして慣性モーメントを求めるのか説明していきます。
まずテンプレートを作成するための、測定しようとする鍵盤が余裕で入る大きさの紙を準備します。私は通常低音・中音・高音から白黒各一鍵ずつサンプルを取って、写真のようにバランス位置を基準に揃えて並べます。鍵盤の横側にバランス位置は書いておきます。
鍵盤の外形線をまず写し取ります。次に鉛の中心位置に印を付け、その直径と長さを記録します。距離はあとで測定します。座板中や座板後、鍵盤厚さの変わる位置にも印をつけます。キャプスタンスクリューの中心位置、バックチェックの重心位置にも印をつけます。
鍵盤の厚さと幅を測定し書き込んでおきます。鍵盤の幅は奥と手前で違うことがありますし、白鍵手前は太くなっていますので、それも忘れずに測定しておきます。鍵盤の厚さはスプルースの部分だけ記録します。座板で使われているかえであるいはならは重いので、座板は鍵盤スプルース部とは別に厚さや幅、長さを記録します。
写真の中で赤線と青線が鍵盤を横切っています。赤の線は白鍵のバランス位置を0として、前後にそれぞれ4cmずつ区切っている線です。前のスライドで鍵盤を単純に6つの部分に分けましたが、本物の鍵盤では4cmずつに区切って体積を計算し、比重をかけてそのブロックの質量を求めます。黒鍵は青線で区切られています。
キャプスタンスクリューは抜くことができるので、一本抜いてその質量を量ります。バックチェックもそうできるようであればしても良いですが、工房にあるスペアの部品の質量を利用しても大きな誤差は出ないと思います。白鍵用材の象牙・プラスチックや黒鍵用材の黒檀・プラスチックも同様にスペアの部品の質量で代用します。個々の距離は先ほど作ったテンプレート上でバランス位置からそれぞれの中心あるいは重心位置までを測定しておきます。
鍵盤鉛は直径と長さから体積を出し、比重をかけて質量を求めます。距離も測っておきます。
これらのデータは私の作った中村慣性モーメント(鍵盤)計算表に入力します。そうすると、慣性モーメントが自動計算されて表示されます。
この表でフロントウエイトも計算することになりますので、そのために必要になるバランス位置から計量点までの距離もここで測定し、表に入力しておきます。これが後で重要な役割を果たします。
これで、ハンマー、ウイペン、鍵盤と3つのアクション部品の慣性モーメントの計測ができました。しかしハンマーとウイペンの数値はまだ、鍵盤手前で感じる慣性モーメント値ではありません。それを計算するためにはもう一段階計算を進めなければなりません。次のスライドでそれを説明します。
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