2013年11月14日木曜日

タッチを変える Page 5: スタンウッドの公式


上の図はスタンウッドのウェッブサイトに公開されているものです。グランドピアノのアクションを3つのてこが連結されたものととらえて、それらのてこを1つのてことしてシンプルに分かりやすく模式化してくれました。

画面一番上に提示した式がスタンウッドの公式で、これからどのように利用できるのか解説していきます。この式を見ただけで「うっ、もうたくさん」と感じる方もいるかもしれませんが、ここを通り抜けないと話が進みませんので申し訳ありません、お付き合いください。

公式は=マークで左右がつながっています。左側と右側は等しい(釣り合っている)というのです。そして、=の左側はアクション全体の支点であるバランスピンから見て手前側(下の一本てこモデルでは左側)にかかる重さが載っています。=の右側は同じようにバランスピンの奥側(図では右側)にかかる重さが載っています。

てこの左側にはバランスウエイトとフロントウエイトが載っています。式にもBWとFWとして左側に置いてあります。この2つがバランスピンより手前に載っている重さです。フロントウエイトは鍵盤単体でバランスさせたときに前側にかかる重さで、量り方は後述しますが。高音側の鍵盤では前側が軽く、後ろ側に重さがかかることがあります。
バランスウエイトは、普通の状態ではかかっていない重さです。実際にやってみるとわかるのですが、鍵盤手前にある程度のおもり(30から40グラム)を載せたときに、ハンマーも鍵盤もどの位置でも止まったまま動かない状態になります。その重さを言います。上の図では黄色いおもりが鍵盤手前に載っています。

てこの右側にはウイペンとハンマーが載っています。式ではウイペンの分として鍵盤レシオとウイペンウエイト、ハンマーの分としてハンマーストライクウエイトとアクションストライクレシオに分けて書かれています。鍵盤のフロント側の長さを1とするとウイペンが載っている位置は通常0.5の辺りです。これを鍵盤比と呼び、この図では0.5としています。そこにウイペンの重さがかかっています。そして、ハンマーは鍵盤比とウイペン比そしてシャンクそれぞれの出力/入力比が合成されたアクションストライクレシオのところにハンマーの重さがかかっています。この図ではストライクレシオが5.0としています。

図の例では、てこの右側にウイペンの分として10g(ウイペンウエイト20g×鍵盤比0.5)とハンマーの分として50g(ハンマーストライクウエイト10g×ストライクレシオ5.0)がかかっているので合計60gの重さがかかっています。

てこの左側にはフロントウエイトの20gがかかっていますので、40gのおもりを載せるとこのてこが釣り合ってくれるわけです。この40gのおもりがバランスウエイトです。

このように目の前にあるアクションを測定してスタンウッドの公式で見てみるとアクションの性格が具体的にわかってきます。たとえばこのピアノはてこが長いけれども軽いハンマーを使っているので、わりかしバランスの良いタッチに仕上がっているなとか、こちらのピアノはてこが長い割りに重いハンマーを使っているので、フロントウエイトを重くしてバランスを取ろうとしているけれども、ちょっと重過ぎて、動きがわるくなっているのではないか、のような感じです。

使い方を理解して経験を積んでいくと、この段階でどのような作業をしていけばタッチを改良できるか見えてきます。

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