2013年11月15日金曜日

タッチを変える Page 6: バランスウエイトとフリクション


順番にスタンウッドの公式の中身を見ていきます。まずはバランスウエイトです。

鍵盤手前に40g位のおもりを載せるとハンマーや鍵盤が動かず釣り合います。この時の重さ40gは正確にはバランスウエイトとは呼びません。なぜなら38gでも42gでもおそらく釣り合っているからです。では、どの数字をバランスウエイトと呼ぶのでしょう。それは、ダウンウエイトとアップウエイトを測定して計算しなければなりません。

40gでもし釣り合っているとして、そこから順々におもりを増やしていきます。41g、42g・・・、するとあるおもりを載せたときに、ひとりでに鍵盤が下がりハンマーが上がっていきます。これを50gだったとしましょう。この50gをダウンウエイトと呼びます。おもりを載せと時にひとりでに鍵盤が降りていくときの重さです。スタンウッドはアクションレールを軽く叩いたときに静かに動き出すときの数値を測定するように言っています。動き出すときの摩擦抵抗は動いている時の摩擦抵抗より少ないからです。

さて、次に40gから39g、38g・・・とおもりを減らしていきます。この場合はおもりを載せた鍵盤を押し下げてジャックが脱進する直前で手を離します。先ほどと同じようにある重さまで減ったところでひとりでに鍵盤が上がり始め、ハンマーが下がり始めます。この時のおもりが30gだったとしますと、アップウエイトが30gである、と呼びます。スタンウッドはアップウエイト計測ののときはアクションレールは叩かないよう言っています。

ダウンウエイトの50gとアップウエイトの30gの間はどのおもりを置いてもアクションは自動的には動かず、釣り合った状態となっています。バランスウエイトはこれらの中間値を取ったものです。つまり、この場合は(50+30)÷2=40gで、バランスウエイトが40gである、と言います。(DW+UW)÷2=BW

バランスウエイトはタッチの重さを決める要素の重要な2つの値の内の一つです。バランスウエイトが大きいと重く感じ、少ないと軽く感じます。この値を測定し、調整することでタッチの重さを意識的に変えることができるわけです。どのように変えるのかやどのくらいの値が目安なのか、などについては後の方で別途説明いたします。

ダウンウエイトとアップウエイトの差を2で割ったもの、例の場合ですと(50-30)÷2=10g、この10gがフリクションです。バランスウエイトから上下10gずつフリクションがあるので、アクションが動き出しません。10gを超えたときに動き出します。この10gはフレンジのセンターピンとブッシングクロスの摩擦抵抗や鍵盤ブッシングとキーピンの摩擦抵抗などが含まれます。普通快適に弾くためには10gから15gのフリクションが必要とされています。10gより少ないとスカスカなタッチになっていしまい、15gより大きいと抵抗感がありすぎたり、スティック状態になってしまいます。(DW-UW)÷2=F、あるいはDW-BW=FまたはBW-UW=Fとも書くことができます。

冒頭でタッチを調整する要素の一つとしてフリクションを上げましたが、このようにDWとUWの計測をすることによってその値が求められますので、この数値が大きすぎたり小さすぎたりするときはフリクションの調整を作業に含めなければならないというのがわかります。どの部分を作業すればよいかは追々わかってきます。

なお、スタンウッド方式では88鍵それぞれに適切なフリクション領域が設定されています。低音はやや大きめで、高音に行くに従って小さい値となっていきます。普通の技術者で、普通の仕事をするならばそこまで精密に調整する必要はないと思います。しかし、タッチ感にうるさい専門家の仕事をするときはそのくらいの精度を追求しないと納得してもらえない場合があるかもしれません。フレンジ用のトルクゲージを使って測定したり、鍵盤のフリクションを調べるやり方もありますが、ここではそこまで深入り致しません。

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